2025.10.28
頚椎前方固定術
けいついぜんぽうこていじゅつ
「頚椎前方固定術(けいつい ぜんぽう こていじゅつ)」という名前、ちょっと聞き慣れない言葉ですよね。
「これってどんな手術?」「首を切るって、怖くないの?」「元通りに動くようになるの?」
そんなふうに不安を感じる方も、きっと多いのではないでしょうか。
この記事では、交野病院・脊椎脊髄センターが、できるだけ専門用語をかみくだいて、わかりやすくご説明します。
ご本人はもちろん、ご家族の方にとっても、安心のきっかけになれば嬉しいです。
そもそも「頚椎前方固定術」ってなに?
この手術は、首の前側(のどぼとけあたり)から行う手術で、
圧迫されている神経を助けてあげたり、不安定になった骨をしっかりと支え直すために行われます。英語では「Anterior Cervical Discectomy and Fusion」、略して「ACDF(エーシーディーエフ)」と呼ばれることもあります。
対象となるのは、たとえばこんな病気です。
・頚椎椎間板ヘルニア
・頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい せきずいしょう)
・頚椎症性神経根症(しんけいこんしょう)
・頚椎のすべり症(骨がずれている状態)
どれも、神経がギューッと押されて痛みやしびれが出てしまう病気です。
手術はどんなときにすすめられるの?
「じゃあ、どのタイミングで手術を考えるの?」
それは、こんな症状が見られたときです。
・手や足のしびれがひどくて、日常生活に支障が出ている
・歩いているとふらつく
・腕や肩、首に強い痛みがある
・お手洗いが間に合わなくなってきた(排尿・排便のコントロールが難しくなる)
こういった症状が続いていたり、悪化していたりすると、
「お薬やリハビリではもう限界かもしれませんね」と医師が判断して、手術を提案することがあります。
手術の流れ
実際の手術の流れは、以下のようになっています。
 
    出典:https://mdf.or.jp/tokyo-spine-clinic/ope/cf/
1,首の前側を、数センチだけ切ります
 のどのあたりを、4〜5cmほど切開します。女性であれば、シワに沿って目立たないようにすることも多いです。
2,神経を押している「椎間板」や「骨のトゲ」を取り除きます
 圧迫の原因を、ていねいに取り除いていきます。
3,空いた部分に人工骨(または自分の骨)を入れます
 ここで“くさび”のように骨を挟み、首の骨と骨がしっかりくっつくようにします。
4,チタン製のインプラントで固定
 最後にインプラントで動かないように止めて、終了です。
術後の過ごし方と回復までの道のり
 
  手術が終わったあと、「ちゃんと元通りの生活に戻れるのかな?」と不安になりますよね。
でもご安心ください。多くの方はこんな流れで回復していきます。
・手術の翌日から、少しずつ歩行練習を始めます
・入院はだいたい7〜10日ほどが目安です
・首にはコルセット(頚椎カラー)を装着して、4〜6週間ほど安静に
・デスクワークなら2〜3週間程度でお仕事復帰される方もいらっしゃいます
回復には個人差がありますが、3〜6か月ほどで骨がしっかりと固まってくる(癒合といいます)のが一般的です。
術後に気をつけたいこと
手術後は、基本的には順調に回復される方が多いですが、いくつか注意しておきたいこともあります。
嚥下障害(ごはんが飲み込みにくい)
首の手術後、のどに違和感が出たり、飲み込みにくさを感じることがあります。
これは、手術でのどの周辺が一時的にむくんだり、神経に影響が出るためです。
多くの場合は、数日〜1週間ほどで回復します。
声がかすれる(反回神経の一時的な麻痺)
声帯を動かす神経が近くにあるため、術後に声が出しづらくなることがあります。
こちらも、ほとんどは時間とともに回復します。
そのほかの合併症(まれに)
・出血や感染
・神経の損傷
・骨が思ったようにくっつかない(偽関節)
ご高齢の方や基礎疾患のある方は、事前の検査や調整がとても大切になります。
医師や看護師とよく相談しながら、慎重に準備を進めていきましょう。
術後の看護とリハビリも大切です
手術が無事終わったあとも、回復をしっかりサポートするためには、看護やリハビリが欠かせません。
・食事がきちんと飲み込めるか確認(嚥下評価)
・呼吸や声の変化を観察
・首の安静を保ちつつ、少しずつ歩行訓練
・ご自宅に戻ってからの生活指導(起き上がり方・入浴・通院など)
交野病院では、医師・看護師・リハビリスタッフが連携して、安心できる退院後の生活までサポートいたします。
最後に:首の手術が不安なあなたへ
「首の手術」って聞くだけで、不安になりますよね。
でも、頚椎前方固定術は、経験豊富な医師が安全に行える、確立された治療法です。
症状がつらくて毎日が不安な方にとっては、未来のQOL(生活の質)を大きく改善できる選択肢になるかもしれません。
無理にすすめることはありません。
でも、選択肢のひとつとして、正しい情報を知っておくことはとても大切です。
気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談くださいね。
 
                   
                   
                  