2025.06.30

椎間板(ついかんばん)ヘルニア

ついかんばんへるにあ

背骨の骨と骨のあいだには、「椎間板(ついかんばん)」という、クッションのようなやわらかい組織があります。この椎間板は、外側の「線維輪(せんいりん)」という硬めの部分と、内側にある「髄核(ずいかく)」というゼリー状の部分でできています。

年齢を重ねたり、重たいものを持ち上げたりして椎間板に強い負担がかかると、外側の線維輪に小さな傷ができてしまうことがあります。すると、中の髄核が外に飛び出してしまうことがあり、これが「椎間板ヘルニア」と呼ばれる状態です。

飛び出した髄核が背骨の近くを通る神経にふれると、腰や足に「ピリッ」とした痛みや、しびれ、力が入りにくいといった症状が出てくることがあります。人によっては首や腕に同じような症状が出ることもあります。

腰椎椎間板ヘルニア

主な症状

・腰痛
腰部に鈍い痛みや重だるさを感じることがあります。

・坐骨神経痛
お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけての痛みやしびれが生じることがあります。

・筋力低下
足の筋力が低下し、歩行が困難になることがあります。

・感覚異常
足の感覚が鈍くなったり、しびれを感じることがあります。

・膀胱直腸障害
重症の場合、排尿や排便に支障をきたすことがあります。

原因とリスク要因

・加齢
椎間板の水分が減少し、弾力性が失われることで、損傷しやすくなります。

・姿勢の悪さ
長時間の前かがみや中腰の姿勢は、椎間板に負担をかけます。

・重い物の持ち上げ
急に重い物を持ち上げると、椎間板に強い圧力がかかります。

・喫煙
椎間板の血流が悪くなり、変性が進行しやすくなります。

・遺伝的要因
家族に椎間板ヘルニアの既往がある場合、発症リスクが高まります。

診断方法

・問診と身体検査
症状の出現時期や部位、痛みの性質などを確認します。

・画像検査
MRI:椎間板の状態や神経の圧迫の有無を詳細に確認できます。
CTスキャン:骨の状態や椎間板の変性を評価します。
X線検査:骨の配列や変形の有無を確認します。

治療法

保存療法(手術以外の治療)

・安静
痛みが強い場合は、無理をせず安静にします。

・薬物療法
鎮痛剤や筋弛緩剤、神経の腫れを抑える薬などを使用します。

・理学療法
ストレッチや筋力強化運動、温熱療法などを行います。

・神経ブロック注射
痛みが強い場合、神経の周囲に麻酔薬を注射して痛みを和らげます。

手術療法

保存療法で効果が見られない場合や、筋力低下や膀胱直腸障害などの重篤な症状がある場合、手術が検討されます。主な手術法には、飛び出した髄核を取り除く「椎間板摘出術」や、内視鏡を用いた低侵襲手術などがあります。

治療期間・完治までの目安

保存療法の場合

・軽症であれば2週間〜3カ月程度で症状が改善
・完全に元の生活に戻るには数カ月かかることも
ただし、無理をすると再発する可能性があるので、痛みが取れてもリハビリを続けることが重要です。

手術療法の場合

・入院期間:5日〜10日程度
・術後の社会復帰まで:2週間〜1カ月
・リハビリを含めると、3カ月〜半年で日常生活に復帰する人が多いです。

治療の早さや費用を左右するポイント

・ヘルニアの場所(腰・首など)
・症状の重さ(神経障害の有無)
・年齢や体力
・通院できる頻度、リハビリへの積極性

予防と日常生活での注意点

・正しい姿勢の維持
長時間の座位や立位では、背筋を伸ばし、腰に負担をかけないようにしましょう。

・適度な運動
ウォーキングや水中運動など、腰に負担をかけずに筋力を維持する運動がおすすめです。

・重い物の持ち上げ方
膝を曲げて腰を落とし、物を体に近づけて持ち上げるようにしましょう。

・体重管理
適正体重を維持することで、腰への負担を軽減できます。

・禁煙
椎間板の健康を保つためにも、喫煙は控えましょう。

まとめ

椎間板ヘルニアは、日常生活の中での姿勢や動作、加齢などが原因で発症することが多い病気です。早期に適切な対処を行うことで、症状の改善や再発の予防が可能です。腰や足に違和感や痛みを感じたら、早めに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることをおすすめします。

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