2025.10.28
【医師監修】松葉杖の正しい使い方|構造・高さの合わせ方・片松葉杖の歩き方まで徹底解説!
【いしかんしゅう】まつばづえのただしいつかいかた|こうぞう・たかさのあわせかた・かたまつばづえのあるきかたまでてっていかいせつ!
松葉杖を初めて使うとき、「本当にこの使い方で合っているのかな?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
実は、松葉杖は「正しい構造理解」と「身体に合った調整」、「歩き方の工夫」ができていないと、転倒や怪我の悪化につながることがあります。この記事では、初めての方でもわかるように、両側・片側それぞれの松葉杖の使い方、構造、高さ調整のポイント、階段の上り下りなどを写真・動画付きでわかりやすく解説します。
松葉杖が正しく使えていないとどうなる?
松葉杖は、ケガや手術後などに下半身の負担を減らすための「代わりの足」です。ですが、間違った使い方をしてしまうと、以下のようなトラブルにつながることがあります。
・肩や腕に余計な負担がかかって、筋肉痛やしびれが起きる
・バランスを崩しやすく、転倒のリスクが高まる
・痛めた足に知らず知らず負担がかかり、回復が遅れる
特にご高齢の方や筋力が弱っている方にとって、松葉杖の「正しい使い方」はリハビリの一部とも言えます。
松葉杖の構造と名称を理解しましょう
まずは松葉杖の基本構造から確認してみましょう。
◾️脇あて(アームパッド)
脇に当てて体を支える部分。直接脇ではなく、胸の横に軽く添えるイメージで使用します。
◾️グリップ(握り手)
手で握る部分。ここに体重をかけます。
◾️杖先ゴム(チップ)
地面と接する先端部分。滑り止めになっており、劣化していたら交換が必要です。
自分に合った松葉杖の合わせ方(サイズ調整)
松葉杖は「高さが合っていない」と、使いづらさだけでなくケガのリスクも上がります。
基本の3ポイント
◾️杖先の位置
足元から前方15cm・外側15cmに置いた位置に杖先が来るようにする。
◾️脇あての高さ
脇と脇あての間に「指3本」が入るくらいが理想(脇に食い込ませない!)。
◾️グリップの高さ
腕を下ろしたとき、肘が「約30度」曲がる位置にくるように調整。
NG例
うまく調整ができていないと、以下のような状態になります。
◾️長すぎる
肩が上がり、脇に強い圧迫がかかる → 神経を痛める可能性
◾️短すぎる
前かがみになってしまい、バランスが不安定になる → 転倒の原因に
【両側松葉杖】平地での歩き方
① 足を地面につけられない場合
両側の松葉杖を肩幅より少し広めに構える。
体重を松葉杖にかける。
怪我をしていない足を前に出す(松葉杖より少し前に)
杖先が遠すぎないよう注意しながら、この動作を繰り返す。
② 少し体重がかけられるようになった場合
両側の松葉杖を肩幅より少し広めに構え、けがをした足を松葉杖の位置まで前に出す。
慣れてきたら松葉杖とけがをした足を同時に出してもOK。
許可の範囲で、松葉杖とけがをした足に体重をかける。
けがをしていない足を一歩前に出す。
歩幅は松葉杖より少し前に出るくらいが目安。
※けがをしている足に痛みが出る場合は、足を無理して前に出さずに、松葉杖と同じ位置で出す。
この動作を繰り返し前に進む。
【片松葉杖】平地での歩き方
片松葉杖は、両側ほどサポート力はありませんが、「日常生活への復帰」へのステップとして使われることが多いです。
けがをしていない方の足側に松葉杖を持つ。
杖の先が体の斜め前に位置するように持つ。
けがをした足を松葉杖の位置まで前に出す。
この動作を繰り返すことで前に進む。
慣れてくれば、松葉杖とけがをした足を同時に出してもOK。
許可の範囲で、松葉杖とけがをした足に体重をかけ、けがをしていない足を一歩前に出す。
※けがをしている足に痛みが出る場合は、足を無理して前に出さずに、松葉杖と同じ位置で出す。
【階段の上り下り】松葉杖での安全な昇降方法
両側でも片側でも、階段を使う際はルールがあります。
昇るときに出す順番
1,怪我をしていない足
2,松葉杖
3,怪我をしている足
※体重をかけてよい範囲か、医師の指示に従いましょう。
降りるときに出す順番
1,松葉杖
2,怪我をした足
3,健康な足
間違いやすいポイント
怪我をしていない足から降りてしまうと、体重が支えきれず転倒リスクが高まります。
よくある質問(Q&A)
Q. 松葉杖の先端が滑りやすいのですがどうしたらいいですか?
→ 杖先ゴムがすり減っている場合があります。こまめな交換がおすすめです。
Q. 松葉杖で長時間歩くと腕が痛くなるのですが?
→ 肘の角度、グリップの高さを再確認しましょう。脇に体重をかけていると神経を圧迫している可能性も。
Q. 左右どちらの手で持てばいいの?
→ 片松葉杖の場合は「健康な足側」に持つのが原則です。
松葉杖を正しく使って、安全な生活を送りましょう
松葉杖は、正しく使えば大きな安心になりますが、間違って使うと転倒や痛みの原因にもなります。
「なんとなく」ではなく、「理屈を理解したうえで使う」ことが、安全な生活への第一歩です。
交野病院・脊椎脊髄センターでは、リハビリの一環として松葉杖の使い方指導も行っております。
不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。