2025.05.01
化膿性脊椎炎
かのうせいせきついえん
化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)とは?
化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん / Pyogenic Spondylitis)とは、細菌感染により脊椎(背骨)や椎間板が炎症を起こす病気です。椎間板炎と似ていますが、化膿性脊椎炎は椎体(背骨の骨自体)にも感染が広がるため、より重篤な状態になることがあります。主な症状としては、強い背中の痛み、発熱、全身のだるさ、動きにくさなどがあり、重症の場合は寝たきりになる可能性もあります。

主な症状
・背中に鋭い痛みを感じ、動いたり触ったりすると痛みが強くなることがある。
・感染が原因のため、発熱や全身に倦怠感を感じることがある。
・痛みや炎症のため、背中や腰の動きが制限されることがある。
これらの症状に加え、病気が進行すると強い痛みや動けない状態が続き、寝たきりになってしまうケースもあります。
原因
細菌感染が原因である化膿性脊椎炎において、特に原因として多いのが「黄色ブドウ球菌」。そのほかには連鎖球菌や大腸菌が原因菌となることがあります。
細菌が血流にのって脊椎や椎間板に到達し、そこで炎症を起こします。感染源としては、体の別の部位(皮膚感染症、尿路感染症など)からの菌の拡散や、手術後の感染が挙げられます。
原因菌を特定し、適切な抗菌薬で治療を行うことが重要です。
化膿性脊椎炎の検査・診断
血液検査
感染や炎症の程度を把握するために、血液検査が行われます。特に重要な指標は「CRP値」です。CRPは炎症や感染があると高くなり、化膿性脊椎炎の場合、多くの患者さんでCRPが著しく上昇します。
画像診断
化膿性脊椎炎の診断には画像診断が欠かせません。
レントゲン検査(X線検査)
初期の段階では変化が見えにくい場合がありますが、症状が進むと椎体間の狭小化や骨の変形、破壊が確認できます。
MRI検査
最も確実で診断精度が高い方法です。
感染した椎体や椎間板の状態を詳しく見ることができ、早期診断や膿瘍(膿のかたまり)の有無を確認する上で非常に重要です。
診断の流れ
背中の痛みや発熱などから、化膿性脊椎炎が疑わしい場合、まずは血液検査でCRPなどの炎症反応を確認します。
その後レントゲン撮影で骨の変化を確認し、MRIで感染の部位や程度、膿瘍の有無を詳細に調べます。さらに、必要に応じて、感染部位からの検体を採取(生検)し、原因となる細菌を特定します。
これらを総合的に判断して化膿性脊椎炎だと診断された場合、急に抗菌薬治療が開始されます。
化膿性脊椎炎の治療
抗生剤(抗菌薬)の投与
化膿性脊椎炎の治療の中心は抗菌薬による治療です。
病原菌に対する抗菌薬を使用し、黄色ブドウ球菌には主に「セファゾリン」などのセファロスポリン系、あるいは「レボフロキサシン」などが用いられます。抗菌薬投与の期間は通常4~6週間以上で、感染の程度や患者の状態によって調整します。
コルセット療法
背骨への負担軽減と痛みの軽減のため、コルセットを着用します。症状改善まで数週間から数か月間装着します。
安静度の管理
治療初期は安静が求められ、背骨に負担をかけないように指導されます。
リハビリテーション
炎症が落ち着き次第、リハビリテーションを開始します。急性期の特定の動きや姿勢(禁忌肢位)は避け、徐々に運動機能を回復させます。リハビリ期間は数か月間続き、理学療法士や医師が適切なプログラムを設定します。
ドレナージ(排膿処置)
膿瘍が存在する場合、外科的な処置としてドレナージを行います。感染部位の膿を排出することで感染を早く治し、症状の緩和を促進します。
これらの治療方法で、感染の進行や治療効果の観察(CRP値、体温の確認)しながら治療を行います。
治療の予後・死亡率について
化膿性脊椎炎は、早期診断と適切な治療を行えば多くの場合は回復する病気です。ただし、治療が遅れると骨破壊や神経損傷を起こし、後遺症が残るリスクがあります。特に高齢者や糖尿病、慢性腎疾患、免疫力が低下した患者では重症化のリスクが高まり、全身に感染が広がると敗血症を引き起こす可能性があります。
結果として死亡率が約10%程度と報告されることもあるため、早期治療が極めて重要な病気であると言えるでしょう。
背中の激しい痛みや発熱が続く場合は、早急に整形外科や脊椎専門医を受診しましょう。できるだけ早く発見し治療することが予後改善のカギとなります。