2025.05.01
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)
けっかくせいせきついえん(せきついかりえす)
結核性脊椎炎とは?
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)とは、結核菌が脊椎(背骨)に感染し、骨に炎症や損傷を引き起こす病気です。
好発部位は主に胸椎や腰椎に起こりやすく、背中や腰の痛み、微熱、倦怠感、体重減少などの症状があり、進行すると骨の変形や神経症状が現れる場合もあります。
他人にうつる可能性は低いですが、肺結核を合併している場合は感染リスクが高ま流ため、早期発見と治療が重要な病気です。

主な症状
・背中や腰の痛み
結核菌が脊椎に感染して炎症を起こすため、慢性的で持続する背中や腰の痛みが特徴的です。痛みは安静時や夜間に悪化することもあります。
・発熱・微熱
はっきりした高熱が出ることは少なく、微熱が続くケースが多く見られます。慢性的な微熱は見過ごされがちですが、結核性脊椎炎を疑う大切なポイントです。
・体重減少、食欲不振
結核菌による慢性炎症が体に負担をかけるため、食欲が落ち、徐々に体重が減少します。原因不明の体重減少が続く場合は注意が必要です。
・疲労感、倦怠
長期間にわたる慢性的な炎症が全身の体力を消耗させ、疲れやすくなり、日常生活にも影響が出ます。
・症状の進行による脊椎の変形、神経症状
病気が進行すると、脊椎が徐々に変形して後弯(猫背)などが目立ってきます。さらに神経が圧迫されると、手足のしびれや筋力低下、歩行困難などの神経症状が現れることがあります。
結核性脊椎炎は、ゆっくり進行する病気のため症状が徐々に現れることが多く、発見が遅れがちです。背中や腰の痛みが続いたり、他の症状が重なる場合は、放置せず早めに医師の診断を受けることが推奨されます。
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)の検査・診断
画像診断
・レントゲン検査(X線検査)
初期では異常が見えにくいこともありますが、進行すると骨の破壊や変形が見えます。脊椎の椎間板の間隔が狭くなったり、骨の輪郭がぼやけたりしている場合、結核性脊椎炎(ポット病)である疑いがあります。
・MRI検査(磁気共鳴画像検査)
MRIは最も重要な画像診断法で、感染の初期段階でも異常を発見しやすくなります。炎症が起きている箇所、骨や軟骨の損傷状態を詳しく確認できます。神経や脊髄への影響の有無も明確に確認可能です。
血液検査・炎症反応検査
炎症反応を示す指標として、血液検査でCRP(C反応性蛋白)の値を測定します。CRP値は感染や炎症があると高値になります。白血球数の変化(特にリンパ球の増減)も参考になります。
細菌学的検査(生検)
脊椎の感染部位から組織や膿を採取し、細菌学的検査(培養検査)を行います。結核菌を特定することで確実な診断ができます。組織を調べることで、結核以外の感染症や腫瘍との区別も可能になります。
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)の治療
結核性脊椎炎の治療は主に抗結核薬の内服治療が中心となります。
抗結核薬治療
通常4種類の抗結核薬(リファンピシン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミドなど)を併用し、6か月~1年間投与します。初期2か月間は強力な4剤併用治療、その後は2剤程度に絞り治療を続けます。ガイドラインに沿って薬の組み合わせや投与期間を慎重に管理し、副作用にも注意する必要があります。
安静・装具療法
脊椎の安定性を確保し、痛みを軽減するために、コルセットなどの装具を使用します。装具の使用期間は数か月間から1年程度、病状によって調整されます。
外科的治療
脊椎の骨が大きく破壊されている場合、脊髄や神経を圧迫して麻痺やしびれなどの神経症状がある場合、薬物治療のみで改善がみられない場合には、外科的治療が検討されます。
手術では感染部位の清掃や骨の安定化を目的として行われます。
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)はうつる?
脊椎自体から感染が広がることは稀ですが、肺結核を伴う場合、咳などにより周囲の人に感染する可能性があります。適切な治療を受けることで他人への感染リスクは大きく低下します。
最後に
結核性脊椎炎は早期発見・早期治療がとても重要です。長引く背中や腰の痛み、発熱がある場合は放置せず早期に受診するようにしましょう。