2025.03.15

脊椎の病気はどんなものがある?

せきついのびょうきはどんなものがある?

脊椎の病気はどんなものがある?

脊椎の病気にはさまざまな種類があり、主に椎間板、椎骨、脊柱全体、またはそれを支える靱帯に関わる疾患が挙げられます。脊椎の病気にはどのようなものがあるのでしょうか?
主な脊椎の病気についてまとめて知っていきましょう。

椎間板に関連する病気

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア(ついかんばんヘルニア)は、脊椎(背骨)の間にある椎間板が変性し、中にある柔らかい髄核が外側に飛び出してしまう病気です。この突出した髄核が脊髄や神経根を圧迫することで、痛みやしびれ、筋力低下などの症状が現れます。主に腰椎(腰の部分)や頚椎(首の部分)で発生します。

椎間板ヘルニアの主な原因は、椎間板の加齢による劣化や長期間の負荷です。椎間板は加齢とともに水分量が減少して弾力を失い、脆くなるため、負荷に耐えきれず髄核が飛び出しやすくなります。また、重い物を持ち上げる動作や長時間の不良姿勢、スポーツでの過剰な負荷も発症を助長します。特に中年層や若年層でも、スポーツや仕事で背骨に負担がかかる場合に発症することがあります。

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椎間板変性症

椎間板変性症(ついかんばんへんせいしょう)は、脊椎(背骨)の椎間板が加齢や長期間の負荷によって劣化し、弾力や高さを失う病気です。椎間板は衝撃を吸収するクッションのような役割を果たしますが、変性が進むとその機能が低下し、脊椎全体の安定性が損なわれます。これにより、慢性的な腰痛や首の痛み、場合によっては神経圧迫によるしびれなどの症状が現れます。
椎間板変性症の主な原因は加齢です。椎間板は年齢とともに水分量が減少し、弾力が低下します。また、姿勢不良や重労働、スポーツなどで脊椎に繰り返し負荷がかかると、椎間板の劣化が進行しやすくなります。さらに、肥満や運動不足もリスクを高める要因となります。この病気は40代以降に多く見られますが、若年層でも負荷の多い生活習慣によって発症する場合があります。

脊柱の変形に関連する病気

脊柱側弯症

脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)は、脊柱(背骨)が左右に湾曲する疾患です。通常、脊柱は正面から見てまっすぐですが、脊柱側弯症ではS字やC字に曲がり、肩や腰の高さが左右で異なるなど、体のゆがみが生じます。進行すると、痛みや疲れやすさ、重度の場合は肺や心臓など内臓の機能に影響を及ぼすことがあります。
脊柱側弯症の原因はさまざまで、最も一般的なのは特発性側弯症で、成長期の子どもに発生することが多く、はっきりとした原因が特定されていません。その他、先天的な脊椎の形成異常や神経筋疾患(筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症など)、外傷や感染が原因となることもあります。軽度の場合は経過観察で済むこともありますが、進行例では装具療法や手術が必要になる場合もあります。

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脊柱後弯症

脊柱後弯症(せきちゅうこうわんしょう)は、脊柱(背骨)が過剰に後ろに湾曲し、背中が丸くなる状態を指します。一般的には「円背(えんぱい)」や「猫背」と呼ばれることもあります。この状態が進行すると、背中や腰に痛みを引き起こすほか、体のバランスが崩れることがあります。
脊柱後弯症の主な原因には、加齢による椎骨の変形や骨粗鬆症による椎骨の圧迫骨折が挙げられます。また、姿勢不良や長時間の前かがみ姿勢、成長期の子どもに見られる筋力不足も発症の要因となります。さらに、先天的な脊椎の異常や外傷、脊椎感染症が原因となることもあります。

脊柱前弯症

脊柱前弯症(せきちゅうぜんわんしょう)は、脊柱(背骨)が過剰に前方に湾曲する状態を指します。正常な脊柱にも自然な前弯がありますが、この湾曲が強すぎる場合、姿勢の崩れや腰痛を引き起こすことがあります。外見的には骨盤が前傾し、腰が反り返った姿勢が特徴的です。
脊柱前弯症の主な原因には、姿勢不良や筋力のアンバランス、加齢に伴う脊柱の変形があります。特に長時間の座り仕事や運動不足により腹筋や背筋が弱ると、骨盤が前に傾き、過剰な前弯が発生します。また、肥満や妊娠による体重増加も、腰椎への負担を増加させる要因となります。その他、脊椎すべり症や外傷、先天性の異常によっても発症することがあります。

椎骨に関連する病気

脊椎分離症

脊椎分離症(せきついぶんりしょう)は、脊椎(背骨)の椎骨の一部である椎弓が分離してしまう状態を指します。特に腰椎の第5番目(L5)に多く発生し、運動時に腰痛や不快感を引き起こすことがあります。分離が進行すると、隣接する椎骨が前後にずれる「脊椎すべり症」を併発することもあります。
脊椎分離症の主な原因は、運動やスポーツによる繰り返しの負荷です。特に体を反らせる動作(バレーボール、体操など)や衝撃を伴う運動(陸上競技など)が分離を引き起こすリスクを高めます。また、骨がまだ成長中の若年層で発症しやすい傾向があります。その他、先天的な椎骨の弱さや外傷も原因となることがあります。

脊椎すべり症

脊椎すべり症(せきついすべりしょう)は、脊椎(背骨)の椎骨が隣の椎骨に対して前後にずれてしまう状態を指します。腰椎(特にL4-L5やL5-S1)で発生することが多く、腰痛や下肢のしびれ、場合によっては筋力低下を引き起こすことがあります。
脊椎すべり症の主な原因には、加齢による椎間板や椎間関節の劣化、脊椎分離症の進行、または先天的な椎骨の異常が挙げられます。特に長年の立ち仕事や重労働、姿勢不良などで脊椎に繰り返し負荷がかかると、椎骨がずれやすくなります。肥満や運動不足も、症状を悪化させる要因となることがあります。

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脊椎圧迫骨折

脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)は、脊椎(背骨)の椎骨が押しつぶされるように変形する骨折です。多くの場合、骨粗鬆症によって骨がもろくなることで起こり、特に軽い転倒や咳などの軽微な外力でも発生することがあります。症状としては、背中や腰の急激な痛み、姿勢の変化(猫背になる)、身長の減少などが挙げられます。
脊椎圧迫骨折の主な原因は骨粗鬆症であり、高齢者に多く見られます。また、外傷やスポーツによる強い衝撃が原因で若年層にも発生することがあります。骨密度の低下以外にも、過度な負荷や椎骨の腫瘍、感染症が骨折を引き起こすリスクを高めます。

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炎症や感染症に関連する病気

脊椎炎(椎骨炎)

脊椎炎(せきついえん、ついこつえん)は、脊椎(椎骨)やその周囲の組織に炎症が生じる病気です。多くの場合、細菌や結核菌などの感染が原因で発生します。症状としては、激しい背中や腰の痛み、発熱、だるさなどが挙げられます。進行すると、炎症が周囲の構造や神経に影響を与え、さらなる痛みや運動制限が起こることがあります。
脊椎炎の主な原因は、ブドウ球菌などの細菌感染です。菌血症や手術後の感染などで血流を通じて椎骨に到達し、炎症を引き起こします。また、結核菌による脊椎結核(ポット病)も脊椎炎の一種として知られています。免疫力の低下や糖尿病、長期間のステロイド使用も、感染リスクを高める要因となります。

脊椎結核(ポット病)

脊椎結核(せきついけっかく)、別名ポット病(Pott's disease)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が脊椎に感染して発生する病気です。この感染によって椎骨や椎間板が破壊され、脊椎の変形や痛みを引き起こします。進行すると脊髄や神経を圧迫し、運動障害や麻痺を伴うことがあります。胸椎や腰椎で発生することが多いです。
脊椎結核の主な原因は、肺結核など他の部位から血液を介して結核菌が脊椎に転移することです。発症には免疫力の低下が関与しており、栄養状態の悪化、糖尿病、HIV感染などがリスクを高めます。この病気は進行が遅く、初期の症状として慢性的な背中の痛みや体重減少、微熱が現れることが特徴です。適切な診断と治療が遅れると、骨の破壊や脊柱の変形が進行する可能性があります。

腫瘍に関連する病気

脊椎腫瘍

脊椎腫瘍(せきついしゅよう)は、脊椎(背骨)やその周囲の組織に発生する腫瘍を指します。腫瘍は良性(無害)と悪性(がん)の両方がありますが、悪性腫瘍は脊椎に隣接する神経や脊髄を圧迫し、深刻な症状を引き起こすことがあります。症状としては、持続的な背中や腰の痛み、神経症状(手足のしびれや筋力低下)などが挙げられます。
脊椎腫瘍の主な原因には、脊椎そのものに発生する原発性腫瘍(例:骨肉腫、軟骨腫)と、他の部位のがんが脊椎に転移して発生する転移性腫瘍があります。転移性腫瘍は乳がん、肺がん、前立腺がんなどの転移によるものが多く、脊椎腫瘍全体の中で最も一般的です。腫瘍の成長により脊椎の構造が損なわれることで、骨折や変形を引き起こす場合もあります。

転移性脊椎腫瘍

転移性脊椎腫瘍(てんいせいせきついしゅよう)は、他の臓器で発生したがんが脊椎(背骨)に転移して形成される腫瘍です。乳がん、肺がん、前立腺がん、腎がん、甲状腺がんなどが脊椎への転移を起こしやすいとされています。この病気は脊椎腫瘍の中で最も一般的で、全身のがん患者の30%程度に見られるとされています。
主な症状は、持続的で強い背中や腰の痛みです。この痛みは特に夜間や安静時に悪化し、進行すると脊髄や神経の圧迫によるしびれ、筋力低下、排尿や排便の障害を引き起こすことがあります。また、腫瘍の影響で椎骨が弱くなり、圧迫骨折を起こすこともあります。

転移性脊椎腫瘍は、がん細胞が血液やリンパ液を介して脊椎に運ばれることで発生します。この病気は進行が早く、早期発見が難しいため、がん患者において背中や腰の痛みが新たに発生した場合は注意が必要です。

その他

脊椎靱帯骨化症

脊椎靱帯骨化症(せきついじんたいこっかしょう)は、脊椎を支える靱帯(じんたい)が骨化して硬くなり、脊髄や神経を圧迫する疾患です。特に後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)が有名で、脊柱管の狭窄を引き起こし、神経症状が現れます。主な症状には、手足のしびれ、痛み、筋力低下、場合によっては歩行困難や排尿障害が挙げられます。
脊椎靱帯骨化症の原因は明確ではありませんが、遺伝的要因が関与していると考えられています。また、加齢や生活習慣、糖尿病などもリスク因子として挙げられます。この疾患は主に頚椎(首の部分)や胸椎(胸の部分)で発生しやすく、進行すると日常生活に支障をきたす場合があります。日本では比較的多く見られる病気です。

強直性脊椎炎

強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)は、脊椎や骨盤の仙腸関節に慢性的な炎症が起こり、脊椎が次第に硬直して動かなくなる疾患です。炎症が進行すると、骨と骨が癒合(強直)し、背骨がまっすぐに固まることがあります。症状としては、腰や背中の痛み、朝起きたときのこわばり感が特徴的です。進行するにつれて姿勢が前かがみになり、日常生活に支障をきたすことがあります。
強直性脊椎炎の主な原因は不明ですが、遺伝的要因が大きく関与しており、HLA-B27という遺伝子を持つ人に発症しやすいことが知られています。また、20〜40歳の男性に多く発症します。慢性の自己免疫疾患の一種で、関節だけでなく、目や内臓にも炎症が広がることがあります。

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